軽くて強い「Lightwood」01
2008年に深澤直人さんと取り組み始めたマルニコレクションに、ジャスパー・モリソンさんが参加してくれたのは2011年のことでした。深澤さんからも「今のマルニ木工が持つ技術を最大限に生かすことのできるデザイナーは世界広しと言え、ジャスパーしかいない。」との太鼓判もあり、新たなチェアの開発が始まりました。
マルニコレクションにはすでに発売されていたHIROSHIMAアームチェアという存在がある中で、ジャスパーさんより出てきた答えがコンパクトで軽量な椅子のデザインでした。その名もLightwoodチェア。温かみのある柔らかなフォルムで日常生活に溶け込む木製の椅子は、樹種や座面の仕様により若干重さは変わりますが、ウェビングやメッシュを使用した場合の重量は約2.5kgと軽量で、(HIROSHIMAアームチェアは約8.5㎏です。)女性でも簡単に片手で持ち運ぶことが出来ます。
ジャスパーさん曰く、「私が今までにデザインしてきた椅子のプロジェクトのように、Lightwoodチェアの構造もまたマルニ木工のゆるぎないクラフトマンシップを持った木工技術により、木製の軽い構造を実現することが出来た。」とコメントしてくれました。
実は木製の椅子において、「軽さ」と「強度」は相反する要素です。
「軽さ」を追求するためには、使用する木材を出来るだけ少なく、また細くしないといけません。さらに付随する金具などを極力使わない構造を考えます。ですが、「軽さ」を追求すればするほど「強度」は失われていきます。この矛盾する2つの要素を両立させるために、気が遠くなるほど多くの試行錯誤を繰り返して、2011年の春にようやく商品化の目途が立ちました。
そのカギとなったのは「木ピン」です。Lightwoodチェアはその名の通り軽さを追求した椅子で、補強のための金具などは一切使用していません(注:公共、もしくは商業施設の場合は補強金具を取り付けます)。前脚と後脚を繋ぐ貫(ヌキ)は軽量な椅子の強度を保つための重要なパーツです。この貫が長年の使用によって抜けない様に貫と脚の接合部へ細い木製のピンを打ち込んでいます。この細かなひと手間を加えることで、扉に錠をかけた時のように木部接合がより強固なものとなります。
このような目立たない部分で工夫を凝らし、ご家庭だけではなく、レストランやカフェ、オフィス空間など様々なシーンで国内外問わずとても人気の高いシリーズになります。Lightwoodチェアはコントラクト案件にも使用いただける世界で一番軽い木製椅子だといっても過言ではありません。
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2020/3/2