折り畳んで美しい「HIROSHIMAフォールディングチェア」
HIROSHIMAアームチェアは2008年の発売以来、世界で30の国と地域に展開されています。アメリカのカリフォルニア州にあるアップル本社には数千脚納品されました。
そのHIROSHIMAアームチェアの傍らで静かに佇むこだわりの椅子をご紹介します。
それは、HIROSHIMAフォールディングチェアです。 (※フォールディングチェアは折りたたみ椅子のことです。)
2013年よりHIROSHIMAシリーズに仲間入りして、同年にはその美しさと高い設計力が評価されてグッドデザイン賞の金賞を受賞しました。 これまでのプロダクトストーリーでも何度かご紹介しましたが、MARUNI COLLECTIONを開発する上で欠かせないのが、“美しさ”と“強度”です。
美しい佇まい
フォールディングチェアのデザインは、特に全方位に気を配る必要があります。通常は隠れる座面裏も、折りたたむことで表に出てしまうからです。 そのため、座面裏は座面表と同様の仕上げを施しました。
背と座の成形合板の木目は柾目(まさめ)を使用することで、繊細な形状に合わせた表情にしています。 背もたれはよく見るとひねりを加えた複雑な曲面の成型合板で、フォールディングチェアでも背にフィットするように考えられています。
背と座の成型合板と垂直に組み合わされた木旋脚のコントラストもおすすめのポイントです。 チェアとして広げた時の美しさはもちろんですが、折りたたんだ時の美しさも重要です。 補助椅子として活用することもあるフォールディングチェアは、クローゼットなどに収納しておくこともありますが、
この椅子は壁に立てかけておくだけでも絵になります。
HIROSHIMAアームチェアと同じ強度基準をクリア
MARUNI COLLECTIONのすべてに、ISOと自社で定めた強度基準をクリアする必要があります。HIROSHIMAフォールディングチェアもその一つです。
一般的に椅子を強度試験して基準値に満たなかった場合は、見えないところに補強を行ったりしますが、全方位から見えてしまうフォールディングチェアにはそれができません。
さらに折りたたむ上で、座面は起き上がるようにスライドして動く必要があるので、その機構にも大変苦労したそうです。金具を強く締めすぎると木部にひびが入ってしまうなどの課題も出てきて、結果的にはすべての用件を満たした美しい金具をこの椅子のために作ってしまいました。塗装も艶のないブラックで統一されています。
デザインや機構について妥協することなく、HIROSHIMAアームチェアと同じ強度基準をクリアさせることを想像すると、製品化にたどり着くまでにかなりの時間を要したことが伺えます。 HIROSHIMAフォールディングチェアは、デザイナーが求める美しさ、工場が自信を持って出荷が出来る強度、この二つが融合したこだわりの椅子です。
さらにフォールディングチェアに欠かせないのが重量です。HIROSHIMAフォールディングチェアは4.8㎏で、女性でも簡単に持ち運びが出来る軽さになっています。単に軽くするといっても、強度を保ちつつなので簡単ではありません。ここでも一般的な椅子を作る作業よりも、細部まで気を遣う必要がありました。
このように、HIROSHIMAフォールディングチェアはHIROSHIMAアームチェアとはまったく違う課題が多くある開発泣かせの商品で、とても多くの苦労があったそうです。 そんなフォールディングチェアは、まるで補助椅子のようにスポットライトを浴びることはありません。
これを機に、ぜひ多くの方に存在を知っていただければと思います。
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2022/1/26