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2022/3/11

【鳥羽周作×山中洋対談 第2弾】世界最高峰の空間がコラボで実現?日本のものづくりを追求する

「sio株式会社」「シズる株式会社」代表取締役社長の鳥羽周作さんと、マルニ木工社長・山中洋による対談、第2弾。
第1弾では、鳥羽さんが手掛けるレストランにマルニ木工の家具を採用した理由を明かしていただきました。
第2弾では、経営者同士の視点で、それぞれの事業、世界を見据えた日本のものづくりへの想いを語っていただきました。

料理もインテリアも「コラボレーション」の時代

山中 経営者として鳥羽さんを見たとき、人を巻き込む力、業界を超えてコラボレーションする力を感じます。

鳥羽 全部を自分でやろうとすると、トンマナは揃うけど、それ以上のものは絶対に出てこないですから。これからは、いろんな意味でジャンルレスな時代になっていくはず。すでにいろいろな業界で越境文化が生まれていますよね。

山中 マルニ木工も、企画からデザイン、生産、販売まで全部自社でやっていた時期がありました。それはそれでいいことだったと思いますが、自分たちが得意じゃないところは無理せず、もっと上手な人たちの力を借りよう、というスタンスに舵を切ったんです。そこで深澤直人さんや、ジャスパー・モリソンさんにデザインをお願いして、名作が生まれました。

鳥羽 異なるジャンルの専門知識を持つ人からの意見が会社を強くしていきますよね。僕らも今、意外な会社とどんどん事業提携を結んでいってて、銭湯ともコラボしてるんですよ。

山中 銭湯と事業提携って、何をされるんですか?

鳥羽 風呂上がりに何を飲みたいか、何を食べたいかっていうのを、銭湯さんと一緒に考え、つくろうとしているんです。「風呂上がりの食」を極める越境コラボレーションですね。

山中 なるほどなぁ。たしかに銭湯のお風呂上がりには必ずあの瓶のコーヒー牛乳が飲みたくなるというような、隠れた連動性がありそうですね。うちも、インテリアと一見遠く思える業界にも、もっと目を向けていってみたいです。


もうすぐ100年。伝統と革新の関係性

山中 うちは1928年に創業し、あと6年で100周年を迎えます。経営もものづくりも、変えてはいけない普遍的なものと、時代やトレンドにあわせて変えなければならないものがあると思います。鳥羽さんの場合、たとえば新しい料理は、どういうときに生み出されるんですか?

鳥羽 基本的には「お客様にいいものを提供したい」というだけではあるのですが、僕の場合、1年前と同じメニューを提供しているということは絶対にないんですよね。みんなに「めっちゃいいですね」と言われる頃には、もう壊さなければならないと思っている。良いものを壊せる人だけが、次の良いものを生み出せる、と考えています。マルニ木工さんの中にも、Takoが生まれて「これでいいか」って思う感覚の人はきっといないですよね。

山中 家具は購入したら20年、30年…場合によっては世代を超えて使っていただけるものなので、「壊す」という感覚はないのですが、つくり終わったからといって満足しない、というのは非常に共感します。使われながら完成していくものですし、メンテナンスや修理をする際も、それがストーリーとして積み重ねられればいいなと思っています。長く使われるものをつくること、一方で新しいものをつくること、両方をしていきたいですね。

鳥羽 経年変化で味が出るのが、料理と決定的に違う家具の魅力ですね。


山中 ちなみに、ミシュランについては鳥羽さんはどう捉えてらっしゃるんですか?

鳥羽 料理人としては素直に嬉しいし、経営者としては集客するうえで絶対あった方がいいもの、という認識です。インテリア業界には、意外とそういった指標となるものがないですよね。

山中 そうなんです。

鳥羽 でも、マルニ木工さんにそういうのはいらないと思います。逆に安っぽくなっちゃいますよ。今までやってきたこととか、歴史の方がずっと価値がある。それに品質なんて、座れば分かるじゃないですか。


世界に誇る、日本の最高峰をつくりたい

山中 マルニ木工は深澤さんとタッグを組み始めてから、「世界の定番」として認められる木工家具をつくるべく、日本のマーケットを飛び出して、世界を意識するようになりました。「世界」というキーワードで、鳥羽さんは何か考えていますか?

鳥羽 僕がいつも言ってるのは「食のApple」をつくりたいということ。驚くような方法で飲食業界を応援するためのプラットフォームとしての会社になりたいんです。レストランをiPhoneと考えて、世界スケールでやっていきたい。いま、その準備をしているところなんです。

山中 食のApple、面白い発想ですね。そんなことを考えている飲食の企業は、他にいないのでは?

鳥羽 いないはずですね。逆に、日本のインテリア業界は、世界への意識、どうですか?

山中 日本の家具メーカーで、海外の展示会に出展して本気で戦おうとしている会社は、残念ながら本当に少なくて、うち含め、片手ぐらいの印象です。というのも、日本のマーケットは縮小しているものの、まだ市場規模があるから世界に出ていかなくてもやっていけるんです。また、海外進出するとしても、ヨーロッパではなくて、隣の大きなマーケット・中国を攻めるのがスタンダートになっていますね。

鳥羽 なるほど。個人的にはヨーロッパのインテリアもたくさん見て触っているけど、日本のトップレベルは世界のトップレベルだと思うので、もったいないですね。

山中 ここ10年、海外にいろいろ出展してきて思ったのは、ヨーロッパのブランドとも、ものづくりの力に差はなくて、足りていないのは志とPR。
だからマルニ木工は、いま世界戦略を立てて、家具の本場・ヨーロッパに根を張るようなことをやろうとしています。すでに30ヵ国の企業とパートナーシップを組めているのですが、同じ熱量を持つ現地のディーラーとしかやらないぞ、というスタンスでいます。

鳥羽 尖ってますね。これだからマルニ木工は最高なんですよ。100周年に向けて、日本の最高峰、つまり世界の最高峰といえる空間を、一緒にやりませんか?僕がまったく新しい日本料理をつくって、そこに山中さんがつくった「次の100年に残したい椅子」を置く。あ、これいま、シズりましたね。

山中 シズりました。是非やりましょう。

構成:守屋あゆ佳
写真:藤村全輝
編集:黄孟志

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