縁をつなぐかたち「EN」01
「MARUNI COLLECTION に”新しいカラー”を加えて欲しい」
ブランドのアートディレクターである深澤直人からセシリエ・マンツに
現行のMARUNI COLLECTIONをさらに発展させてくれるような世界観を共に作り出せたら、と伝えた言葉です。
MARUNI COLLECTIONの今後をデザインする
2008年に始まったブランドMARUNI COLLECTIONは深澤直人と、ジャスパー・モリソンの2名のデザイナーと共に、毎年新作を発表してきました。
ようやくブランドの基礎ができてきた中で、新しいデザイナーを加えたいという話が出始めていました。
それはMARUNI COLLECTIONの価値観を共有しつつ、“新しいカラー”を加えてマルニ木工をさらなる成長に導いてくれるようなデザイナーが必要であるとわたしたちは考えていました。
セシリエ・マンツのルーツ
陶芸家のご両親と共に幼少期には、有田焼で有名な佐賀県に暮らしたこともあるデンマーク出身のデザイナーであるセシリエ・マンツ。
幼いころからモノづくりを身近に感じ、“オブジェクト”、“モノ”の細部に宿る機能性、また機能美と工芸品のつながりを大切にしています。
近年はデンマークの企業をはじめ、日本企業にも多くのデザインを提供されています。皆さんの身近なアイテムにももしかしたらセシリエ・マンツのデザイン製品があるかもしれません。彼女のデザインはシンプルで機能的でありながら、素材を生かした温かみのあるものが多く見受けられます。
初の女性デザイナーがラウンドテーブルに込めた想い
初めての打合せの後、セシリエ・マンツよりラウンドテーブルをデザインすることの提案がありました。
日常生活での多くの活動はテーブルや椅子の周りで起こります。家族・人々がそれらの周りに集まり、体験や想像が生まれ、またその体験や想像を共感して繋がりが生まれます。それほどテーブルや椅子は生活の中でとても重要な要素の一つです。
彼女がラウンドテーブルを選択した理由はそこにありました。
人々が集まるきっかけ、団らんや平等なども含めたコンセプト。
この時点ではまだ名前のないラウンドテーブルの製作が始まりました。
感覚をシンクロさせること
マルニ木工と深澤直人、ジャスパー・モリソンの間には、数年協働してきたという経験から商品開発を進めていく上での共通認識のようなものがありました。
しかし今回、マルニ木工にとってセシリエ・マンツは2011年のジャスパー・モリソンの参加以来11年振りとなる新しいデザイナーとの協働です。デザインを進める上で一番はじめにとりかかり、今でも最も重要な要素だったと思えるのが、彼女がデザインした作品の特徴を理解し「言語」や「意図」の共通認識を整理するということでした。
商品開発がースタートした直後、世間はコロナ禍真っただ中。
オンラインミーティングが定着してきているとは言え、デンマークと日本という距離も時差もある環境のもと自由に行き来できない中でデザインのすり合わせを行うことはとても難しい作業でした。
商品開発担当者はセシリエ・マンツというデザイナーを誰よりも理解し、彼女の「言葉」や「意図」を作り手である試作職人や工場現場へ丁寧に伝えENシリーズを作りあげていきました。
セシリエ・マンツはENの新作発表会の中で、マルニ木工を「新しい挑戦を恐れない企業」と表現くださいました。
深澤直人は「シンプルに見えるものほど難しい。それを表現したマルニ木工の凄さを見て欲しい」と。
お二人のデザイナーにこのようなお言葉をいただき、開発担当と工場は心の中でガッツポーズをしながら叫んでいたと思います。
提供されたデザインからほぼ完成に近づいたころ、名前を考え始めました。
日本語では 円、丸、縁 という意味のある”えん“。
実はデンマーク語では 1、ひとつ目 を意味する言葉でした。
コンセプトは人々を繋げる丸いテーブル、そしてマルニ木工との最初の取り組みであること、それ以上の説明は不要なほど、「EN」はしっくりとくるネーミングでした。
深澤直人、ジャスパー・モリソンのデザインと、セシリエ・マンツのデザインにはもちろんそれぞれカラーの違いがありますが、柔らかさとシャープさが共存した製品の佇まいを見た方には感じていただけると思います。
丸いテーブルを囲み、中心を眺め語らい新しい創造が出来る、そんなコンセプトのテーブル「EN」、 ぜひその目で手で見て、触れて、感じていただければと思います。
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2022/11/7