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COLUMN コラム

HIROSHIMAアームチェア用クッションができるまで ― 山形緞通の手仕事が生む、美しさと座り心地

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日々の中で、椅子に座って過ごす時間は思いのほか長いものです。

マルニ木工の定番として、多くの人に選ばれてきたHIROSHIMAアームチェア。
特に板座は、HIROSHIMAの特徴である水平ラインが際立ち、凛とした佇まいを引き立てます。無垢の座面は使うほどになじみ、少しずつ深まっていく風合いも、長く使い続けるチェアだからこそ感じられる楽しみです。

一方で、朝から晩まで座って過ごす日や、冬の冷え込むような日には、ほんの少し、やわらかさを添えたくなることもあります。そうした声から、HIROSHIMAアームチェア用クッションが生まれました。

板座に、より心地よさを加えながら、HIROSHIMAアームチェアの一体感と美しさを損なわない。
そんなクッションをかたちにできたのが、山形緞通でした。
なめらかな板座のラインに自然に馴染み、違和感なく、椅子の美しさをそのまま引き立ててくれました。

HIROSHIMAアームチェアをつくったときから、板座にも合うシートを考えていた。
椅子のかたちに静かに寄り添うもの。その答えが緞通だった。
山形緞通の職人たちと出会い、ようやくかたちにできた。
厚み、手触り、色。すべてが自然でどこか懐かしい。
道具としての椅子にそっと心地よさを添える。そんなシートができたと思う。

深澤直人

今回は、山形緞通のモノづくりとHIROSHIMAアームチェア用クッションの使い心地について、詳しくご紹介します。

山形緞通について

昭和10年(1935年)、山形県山辺町で創業したオリエンタルカーペット株式会社によるじゅうたんブランド。創業以来、日本で唯一、糸づくりから染色、織り、仕上げ、アフターメンテナンスに至るまで、じゅうたんの全製作工程を自社工房で一貫管理。世界的にも稀な厳格な生産体制のもと、 日本の暮らしと風土に根差した上質なじゅうたんをつくり続けています。

原点である手織り緞通を織る風景

原点である手織り緞通を織る風景

桃色の社屋

桃色の社屋

山形緞通は1935年、山形県山辺町で創業者・渡辺順之助により設立されました。
女性が快適に働ける職場を目指して建てられた窓の多い桃色の社屋は、2025年に国の登録有形文化財に指定されています。戦時中は羊毛不足により、葛の根を原料に用いて緞通を製作するなど、工夫を凝らして技術を守り抜きました。戦後にはGHQ司令室への納品が高く評価され、復興の一翼を担いました。以来、山形緞通は日本の産業と地域社会に貢献しながら、今もなお伝統と技術を受け継ぎ、ものづくりを続けています。

原点である手織り緞通を織る風景

地元で暮らす女性たちが、織り手として活躍

桃色の社屋

葛の根を用いた緞通

HIROSHIMAアームチェア用クッションができるまで

椅子のかたちにそっと馴染む、山形緞通のクッション。そのやわらかさを生み出す、手仕事の工程をご紹介します。

原料

原料となる羊毛は、上質なニュージーランド産羊毛とイギリス産羊毛です。
選び抜いた複数種を、剛直性、弾力、柔軟性、肌触り等の観点から、各製品に最適な割合でブレンドし、オリジナルの原料を用意します。

染色

専門の職人を有する自社の染色工房で、羊毛の試験染め、耐摩耗、耐光テスト等を繰り返し、各製品に最適かつ、堅牢な染色を行います。染色工房には、これまで山形緞通が制作した2万色以上の染色羊毛がストックされています。

引き揃え

クッションの繊細な形状表現と、十分な剛直性を両立するために、オリジナルの糸を用意します。使用する羊毛の太さを選定し、それらを束ねる本数を適切なバランスに調整することで、仕上がりにおける高密度で滑らかな手触りを実現しています。

手刺緞通(てさしだんつう)

高品質な緞通の量産化を図った製法です。原寸大の製作図面を基布に転写し、フックガンという専用の工具で羊毛を打ち込み、刺繍のようにじゅうたんを織っていきます。職人が工具と一体になり、図面に対して正確な動作を行うと共に、常に一定の力で高密度に羊毛を打ち込んでいくには、修練による高い技術を要します。

シャーリング

織り上げたじゅうたんは、シャーリングによって表面の毛足を均一に整え、美しい光沢と滑らかな手触りを引き出します。このシャーリングは、仕上がりを左右する重要な工程であり、製品の品質を際立たせるために欠かせません。

耳仕上げ

この工程で、HIROSHIMAアームチェアとの一体感をもたらす形状が決まります。パイルの端部を手鋏で僅かに傾斜をつけてトリミングし、まるで座板に張り込んでいるかのような形状を作り出します。この理想的なデイティールは、長年のものづくりの集積で発展を遂げた山形緞通の技術力によって実現しました。

手仕事が生む美しさと、実際の使用感

このクッションの特徴は、ひとつひとつ手作業で整えた耳の仕上げ。
この柔らかな曲面が、椅子との一体感を生み出しています。思わず触りたくなるそのかたちは、どこかHIROSHIMAアームチェアとも通じるもの。細部の丸みにまで、人の手のあたたかみを感じられ、その静かな存在が、暮らしのひとときをさりげなく豊かにしてくれます。

クッションの厚みは約2cm。
密度の高い毛足で、ふわりと沈み込むような柔らかさではなく、ほどよい張りがあり、腰をかけたときに体を支えてくれます。

座り心地には芯がありますが、緞通ならではのしっとりと厚みのある手触りに、どこかほっとするような心地よさを感じます。

今回のクッションには、すべり止めシートを同梱しています。

板座の場合、背もたれにもたれてゆったりと座るような場面では、おしりが少し前に滑りやすいというお声がありました。
板座とクッションの間にすべり止めシートを敷いてお使いいただくことで、完全に固定されるわけではありませんが、クッションがずれにくくなります。さらに、緞通の密度の高い毛足が身体の滑りも抑えてくれるため、張座に近い安定感が得られます。

90年以上の歴史を持つマルニ木工と山形緞通。それぞれが「工芸の工業化」「品質こそ、デザインなり」という思想のもと、伝統的な技術を継承しながら、現代の暮らしに根ざしたものづくりを続けてきました。この出会いがかたちになったのは、ごく自然な流れだったのかもしれません。

無垢の木が風合いを深めていくように、緞通の質感も、時とともにやわらかく艶をまとっていきます。
ふたつの素材が寄り添い、使うほどに深まる味わいを、どうぞゆっくりと楽しんでください。

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