COLUMN コラム

深澤直人の「溶かす」ディテール HIROSHIMA Vol.2

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“溶かす”と聞くと固形のものに熱を加えて液状にすること、例えば「氷を溶かす」などを想像されるかもしれません。

発売前の試作品を検討している際に、HIROSHIMAアームチェアの一番象徴的な部分でもある背もたれからアームにかけての接ぎの部分を指して、深澤さんから「もう少し溶かして欲しい。」と言われました。

この椅子は有機的な造形で2次元の図面上では確認できない曲線がたくさんあります。“溶かす”とは、木の表情をより柔らかくする、面を磨き落とす、山の稜線のようにぼかすといったニュアンスを表現しています。原寸の試作品を見ながら一つ一つ最適な線がどこなのかを試行錯誤してHIROSHIMAアームチェアが出来上がりました。

無意識に触れる

試行錯誤して生まれた椅子を初めて世界にお披露目する日がやってきました。2009年4月のミラノ・サローネ国際家具見本市です。
まだ海外の取引先もなく、マルニという会社を誰も知らない中、会場で必死に呼び込みをして説明を繰り返しているうちにある事に気が付きました。

会場内には数えきれないくらい多くの世界中の椅子が展示され凌ぎを削っています。そんな中、HIROSHIMAアームチェアを見て、近寄って、背もたれからアームにかけてゆっくり撫で、座る人がたくさんいました。なぜ通りすがりの知名度もない会社の椅子に皆吸い寄せられるように座るのか。答えは深澤さんがこだわった”溶かす”ことにありました。

人は皆、無意識によい椅子とはどんなものかを頭の中で漠然とイメージしています。それを顕在化して、「そうそう、こういう椅子が欲しかった!」と気づくお手伝いをするのがデザイナーの仕事です、と深澤さんはおっしゃっていました。そのためには一番顔になる部分を丁寧に仕上げ、最も美しく、触り心地、座り心地を追求していったのです。

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2019/01/10

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