2023年 G7広島サミット Vol.01 ーご依頼から木取りまでー
2023年5月21日に閉幕したG7広島サミットにて、マルニ木工の製作家具が使用されました。
このような国際的な大舞台で弊社の製品が認められるという事は、本当に名誉なことです。
これから2回に渡ってそこに至るまでの経緯を皆さまにご案内できればと思います。
INDEX
はじまり
「広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はない」と声明を出されています。
2022年5月23日、岸田首相は、2023年G7の議長国を務める日本がサミットを開催する場所として広島で行うことを発表しました。
引用:日本経済新聞
そういった流れの中、広島県の多くの企業がG7に関わる可能性が出てきました。
マルニ木工もその一社として、G7の会議で自社製品を使っていただければという期待を感じておりました。
企業選定
それからの道のりはとても長く、プレゼンテーションに次ぐプレゼンテーションで、最終的に使用される家具の一部としてマルニ木工が選ばれ、発注を受けたのは2023年2月21日(火)!
G7の開催は5月、稼働日を考慮すると2ヶ月もない短い製作期間となりましたが、G7のプロジェクトに関わられる大変誇らしい機会をいただき、喜びとともに、可能な限りの速さと正確さで準備を進めました。
製作家具
・首脳会議用円卓テーブル(広島県産材ヒノキ)
・シェルパデスク(広島県産材ヒノキ)
・卓上国名プレート(広島県産材ヒノキ)
・HIROSHIMAアームチェア(張座)
マルニ木工のモットーは「工芸の工業化」
「工芸の工業化」とは職人の手作業と緻密な機械加工を融合し、工芸的な美しさ、安定した高い品質、適正な価格を実現することです。
つまり生産ラインに乗せた量産ができる工場を持つ企業です。
ただし今回のご注文内容は、HIROSHIMAアームチェア(張座)以外は全て特注品のため、量産できるように準備を行うのではなく、新作などと同様、全て一貫して試作職人のたった8名がこのG7用の家具製作に携わりました。
課せられた2つの課題
今回の要件と提案から2つの大きな課題が立ちはだかりました。
1つ目は通常図面を含めて約3ヶ月の必要な製作を8週間で完成させる必要があること
2つ目は、普段マルニ木工では使用しない広島県産材の無垢のヒノキを使用すること
ここからがマルニ木工の力の見せ所となります。
課題1:図面
早速、円卓テーブルのデザインに取りかかりました。
パースでデザインを確認後、直ぐに詳細図面の提出が求められました。
この時点で2月28日(火)、通常であれば詳細設計図に関してはじっくり時間をかけたいところですが、全体的なスケジュールを考えると、ここで時間を費やすという選択肢はありませんでした。
図面設計の段階でミスが起こると製造段階で振り出しに戻ってしまうという重圧の中、1名の図面設計担当者がたった2日間で図面を完成させ、3月3日(金)に提出することが出来ました。
図面設計担当が所属する技術部は普段は余り表舞台に出てこないため、その実力は余り知られていませんが、図面設計担当の能力が前面に出たこの瞬間、近くで見ていた者は鳥肌が立ったそうです。
通常、図面を描ける者でおよそ5日間は掛かります。
そして図面提出後の3月15日(水)、デザインが承認されようやく生産に取り掛かることが出来ました。
※画像は寸法無しで簡易版の図面となります。
その頃、2つ目の課題となる今回特別に仕入れた広島県廿日市市(はつかいちし)産や、安芸太田町(あきおおたちょう)産のヒノキ材が納入されました。
課題2:広島県産材の無垢のヒノキの木取り
実は広島県産のヒノキは主に建材用に加工されているため、柾目材は存在せず、全て板目材です。
今回の受注には柾目で仕上げるという大きな課題がありました。この時点で新たに柾目材を製材する時間はありません。
ここで技術部責任者は大きな賭けに出ました。板目材の板目面を使用せず、柾目が出る木端(こば)面を表に集成していくというやり方です。
既に3月下旬、サンプル作成の余裕がない中、作業は進められました。
木材は切ってみて初めて出てくる「節」などがあります。その切断する面を一つずつ想像しながら木を選別します。ここでは木材選別技術が試されました。
木取りについての詳細はこちらから
マルニ木工が普段取り扱いをしているのは、ビーチ材、オーク材、ウォルナット材などの広葉樹。ヒノキは針葉樹になります。木材の種類により機械の反応が異なるため、図面と確認しながら、少しずつ微調整を重ねます。
ここで重要になるのが、隣同士になる木材との相性です。
HIROSHIMAアームチェアを中心としたMARUNI COLLECTIONは人が無意識に気にしてしまう部分を出来る限り無くし、日常に溶け込むことを大切にしています。
今回の製作にもその精神を宿し、隣同士になる木材の色の濃淡が美しく映えるように配慮しています。
図面から確認いただける通り、天板も脚も全て細かな部材からできています。
この円卓の脚部一周、天板の部材を揃えるだけでも、相当の時間を費やしたことを想像していただけると思います。
G7広島サミット公式サイトでは多くの画像をご確認いただけます。
G7広島サミット公式サイト