【連載 &Furniture】これからのワークスペースは、自分が主体に。
テレワークによる在宅勤務も一般的になってきた昨今。
オフィスに行かなくても良い権利を得る一方で、家のなかで仕事と生活をうまく両立させる必要もでてきました。そんなときにインテリアから考える最適なホームオフィスの考え方は?
数々のオフィスを手がけるインテリアデザイナーの吉田裕美佳さんに話を聞きました。
オフィスに必ず置かれている定番家具と言えば、リクライニング付きのオフィスチェアに、たくさん引き出しが付いたデスク。人間工学に基づいたデザインは、長時間の作業を快適にする優れた機能性にあふれたものです。
リモートワークが推奨され、家で仕事する機会が増えたいま、自宅にワークスペースがほしいという声も多く聞かれますが、上記のようなオフィスファニチャーは大きすぎて、邪魔に感じてしまうという意見も。
「機能性の高い椅子は確かに快適ですが、現代の働き方を観察すると、デスクに座ったままの作業時間は以前よりも減り、アイデアを練るためにリラックスした姿勢で思考を巡らせたり、カジュアルな環境でコミュニケーションを取る機会の方が重要視されている気がします。
その延長として考えれば、自宅で仕事をするからといっても、必ずしもデスクワークに特化した環境を整える必要はないかもしれません」
好きなときに、好きな場所に移動して仕事をする。
インターネットやデジタルデバイスのおかげで、リビングやダイニング、キッチンの片隅や窓際、ちょっとしたコーナーなど、家のどこにでもワークスペースをつくることはできると吉田さんは話します。
「家にオフィスチェアを置いたときに違和感を覚えるのは、ボリュームの問題だけでなく、金属や樹脂といった工業素材がプライベートな雰囲気に馴染まないため。インテリアを決めるうえでもっとも大切なのは、背景ときちんと馴染むものを選ぶこと。
空間全体を見まわしたときに、家具だけが悪目立ちしないか。かたちだけで決めてしまうのではなく、色みや素材などのディテールまでしっかりと吟味すると、自然で、より自分らしい空気感が作り出せるはずです」
高い機能性を持たずとも、きれいな姿勢で座ることができるなら、木製椅子でも十分。
マルニ木工のコレクションから吉田さんがオススメするのが、Lightwood deskとchairのセット。
コンパクトなサイズ感のデスクと軽量で座り心地の良い椅子は、作業に集中できそうとコメント。
クッションが柔らかいシートは座った瞬間こそ心地よいかもしれませんが、座り続けているうちに体勢が崩れやすいので、ある程度堅いシートがオススメ。さらに、スマートフォンやタブレット端末を駆使してペーパーレスに取り組めば、専用のデスクも必要ないのではと吉田さんは提案します。
「家にいるような感覚でリラックスして仕事ができるようにと、最近ではオフィスでも、カジュアルなテイストの木製椅子やソファを取り入れることが多いですね。
ある程度のメリハリは必要でしょうが、仕事だからといって、背伸びをして無理のある理想を追い求めすぎないこと。オフィスでも、自宅でも、これからのワークスペースは、ごく自然に気軽な感覚で、あるべき姿を空間に映し取っていくのが主流になってくるでしょうね」
photo_ Ayumi Yamamoto
text_ Hisashi Ikai
cooperation_ Yumika Yoshida (FLOOAT)